山九株式会社
本社|東京都中央区勝どき6-5-23
設立|大正7年(1918)10月1日
社員|12,235名(2024年3月現在)
業種|陸運業
事業|物流事業、機工事業、その他
HP |https://www.sankyu.co.jp/
東京都中央区に本社を置く、山九株式会社。1918年の創業以来、「作る・運ぶ・直す」という産業に必要不可欠な価値を提供してきました。祖業である「運ぶ(物流)」に続く、主力事業のひとつが「作る」を担う機工事業。プラント(工場)の設計・建設・メンテナンスをトータルに手がけています。
機工事業本部のDX組織は「高度IT人材」と「現場出身の若手」で構成され、後者の若手育成が急務に。全社で整備された「デジタル専門知識研修」に加えて、企画力や課題抽出力などの「思考技術」の強化が必要でした。こうした問題解決のスキル強化を目的に2024年12月、エン・ジャパン[DXリスキリング]のDX基礎研修をご導入いただきました。
導入部署であるDX推進グループを統括している伊美様
今回、エン・ジャパン[DXリスキリング]導入部署であるDX推進グループを統括している伊美様(グループマネージャー)にお話をうかがいました。現在(2025年3月インタビュー時点)では、若手の報告から「現場を正しく分析し、業務を見直して問題を解決する」思考を感じるとのこと。「研修の効果が如実に出ています」と語ってくださいました。
「問題解決や業務改革をわかりやすく伝える研修を探していました」と伊美様。
同社は全社DX戦略に基づき、システム開発やセキュリティなど高度IT研修を整備していました。「それだけでは足りない」と、伊美様は感じていたそう。「現場はまだまだ紙やアナログ作業が多いです。現場と対話し、課題を抽出して適切な解決策を起案する。たとえば、kintoneなどのノーコードツールやRPA、アジャイル開発などです。こうしたDXプロジェクトの『企画力』が必要であり、そのために問題解決などのコンセプチュアルスキルが必要だ」とお考えでした。
外部のDX研修を探すも「IT専門知識」「高度プロジェクトマネジメント」が中心。こうした研修は同社内で整備済みで、受講者となる「若手の非IT系メンバー」には「高度すぎる」と感じられていたそう。問題解決などの思考技術を「わかりやすく」若手に伝える研修を模索されていたのです。
「研修内容がまさに自分のイメージ通りで、しっくり来ました」と伊美様。「企画力も、問題解決も抽象的であり、なかなか理解が難しい概念だと思います。エン・ジャパンさんの研修は抽象概念が適切に『言語化』され、理解を促すために『図式化』もされていました。これなら若手も理解でき、能力開発につながるイメージが持てました」。
また、研修がオンライン型という点も魅力だったそう。受講対象者となる若手メンバーは東京だけでなく、福岡、大阪にもいる。Zoomで全国を繋いでリアル配信するため、門戸を広くし、意志ある若手に多数ご参加いただけることになりました。
本研修の実施を伊美様から社内に共有すると、他部署の管理職の方からも「うちのメンバーにも受講させたい」という声が次々にあがり、受講者が18名に増えたそう。「他のマネジメント層も、私と同じくコンセプチュアルスキル教育の課題感を持っていましたね」。
・エン・ジャパン[DXリスキリング]では「DX人材基礎研修」をご提供。
・エン・ジャパンで内製し、社内で300名超が受講した研修です。(全体像は以下参照)
・1回90分(講義60分+質疑応答30分)を全5回、週2回、約2週間実施しました。
・今回の受講者は合計18名。オンラインで全国をつないでご参加いただきました。
全5回の研修の全体構成。ロジックツリーなどの「基礎」から丁寧にレクチャー。
「若手のチカラが着実についています」と伊美様。「ロジックツリーで問題を切り分け、論点を整理できるようになってます」と語ってくださいました。
「問題解決などは、慣れないうちは『小難しい』と感じやすいです。それを研修内で『日常的な物事』に紐づけてレクチャーしてもらえました。たとえば、プロジェクトで大事なタスク分解を、『天むす(天ぷら入りおにぎり)』づくりで考えるとか。研修を受講した若手を中心に、組織内で話題になっていました。反応が非常によかったですね」とのこと。
今回の研修受講者は18名。オンライン形式のため、東京、大阪、福岡と日本全国の拠点からご参加いただきました。「ワークもあって参加しやすい」「人間の心理や、脳の使い方も理解できた」「研修動画を永久保存してほしい」という感想もいただけたそう。5回(5日間)にわけて実施したことで、少しずつ受講生と講師との距離感も接近。よりリアルな業務の悩みや課題感をアンケートで教えてくださるようになりました。
伊美様(写真左端)と、研修に参加されたみなさま
・オンライン研修の様子
・各研修の終了時のふり返り
・知識だけではなく、「思考技術の身につけ方」もレクチャー
同社では2024年12月上旬から2週間、エン・ジャパン[DXリスキリング] (DX人材基礎研修)をご利用されました。合計5回の研修では、各回が終わるたびに以下のように「学び」「仕事に活かすこと」をふり返り、学びの定着を促進しました。
── 問題解決方法は今まで教えてもらっていましたが、今回は「言語化」「図式化」が丁寧で腹落ちしました。具体的な日常生活におきかえた解説も助かりました。途中で「意見を出す場」もあり、私たち受講側は受け身にならず参加できて楽しかったです。
── プロジェクトの正体やタスクの分解(WBS:Work Breakdown Structure)をわかりやすく学べました。「天むす」を題材にした演習は取っつきやすい。ガントチャート作成の前に、タスク分解が重要。若手のうちから学んだほうがよいことだと感じました。
── ツールは手段である。目的を明確にし、達成のための改革案を検討する。DXでは、物事の捉え方を変えていく必要があるとわかりました。全5回をふり返ると「教科書的な部分」と「講師の経験談」がミックスされた、実用的な内容で非常に有意義でした。
研修終了から数ヶ月経った今も、参加されたみなさんの「行動変容」は続いているとのこと。「最近、メンバーから報告で、『私たちの部署ではシステムの魔改造を避け、業務自体を見直す必要があると思います。Fit to standardのアプローチが必要です』という説明がありました。今回の研修で学んだ『小難しい概念』を、自分の言葉で語っていたのです」と語る伊美様。
研修直後こそ「研修で教わった内容を使ってみよう」と伊美様からメンバーに声をかけていたものの、今は特段働きかけをしていないそう。「つまり、本人が今回の研修で『衝撃』を受けており、印象に残り『心に刺さったこと』がちゃんと本人の血となり、肉になっているのだと思います」と伊美様。
研修にメンバーを送り出した別部署の管理職の方から、感謝の声が届いているそうです。「(私が)本格的な問題解決技法を学んだのは40代になってから。初級編とはいえ、問題解決の概念を20代から学べているメンバーが羨ましい」と語ってくださったとのこと。管理職のみなさんが「若手に学んでほしい」と感じていた知識、スキルが受講者に伝わり、考え方がストレッチされているのです。
「私たち機工事業本部が考えるDX人材育成において、問題解決などのコンセプチュアルスキルが必要である。この仮説を検証ができたことが大きな収穫です」と伊美様は語ってくださいました。DX人材育成の仮説がひとつ検証され、検討が次の段階に進んでいるそうです。
今後の検討のひとつが「コミュニケーション」とのこと。「プロジェクトの難易度が上がると、関係者(ステークホルダー)が増えます。たとえば現場には、『DXツールを入れれば課題が解決するんでしょう?』と過度な期待を抱いている人もいます。DX担当は『解決できること』と『解決できないこと』を伝え、業務を見直す必要性を忍耐強く説明する必要があります。若手の交渉力や調整力をどう鍛えていくのかが論点ですね」と伊美様。
もうひとつの検討が「道具」とのこと。「私たちはkintoneなど特定の道具を推進したいわけではありません。まず、あるべき業務フローを検討し、その次に適切なツールを選定する。この順番が大切です。一方、DX人材の育成を考えると『思考だけ』だと限界があります。『自分たちで仮組みできる道具』があると思考をカタチにできる。検討がグッと前に進みます。デモアプリのようなものがあれば、社内関係者とのディスカッションも進めやすくなるのも事実です」と伊美様。プロジェクトの進め方と推奨ツールをどうするのかが、今後のもうひとつの検討課題とのことでした。
歴史ある大手企業でも、DX推進やDX人材育成は試行錯誤をされている。DXツール(道具)ありきではなく、道具を扱う人材を育てることが大事であり、そのために問題解決などの「コンセプチュアルスキル」が有効である。こうした仮説検証をご一緒でき、私たちも多くの学び、気づきをいただいたインタビューとなりました。
公開日:2025年7月1日