独立行政法人国際協力機構(JICA)
本社|東京都千代田区二番町5-25 二番町センタービル
設立|2003年10月1日
社員|2,011人(2025年1月1日時点)
業種|官公庁・非営利法人・団体
事業|開発途上国への技術協力 他
東京都千代田区に本部を置く、独立行政法人国際協力機構(JICA)。日本の政府開発援助(ODA)を一元的に行なう実施機関として、開発途上国への国際協力を担っています。国際社会の急速な変化に適応するため、「共創と革新」を掲げ、国内外の様々な組織・団体と連携し、イノベーティブな事業を展開しています。
JICAは2022年に「DXビジョン」を制定し、デジタル技術やデータの活用に取り組んでいます。2023年度はローコードツール(Power Platform)やデータサイエンスの研修を実施。2024年度は「ビジネス変革を担う人材育成」をテーマに、エン「DXリスキリング」のkintone導入支援をご利用いただきました。
本村様(左)と坂部様(右)
今回、「DXリスキリング」導入部署である情報システム部の坂部様(IT企画課長)と、本村様にお話をうかがいました。現在(2025年4月インタビュー時点)では、各部署でビジネス変革の機運が高まっているとのこと。「単に『新しいツールに走る』のではなく、業務プロセス自体を見直せる人材が着実に育っています」と坂部様は語ってくださいました。
「現場職員が自ら実験でき、柔軟に改修できる道具が必要でした」と坂部様。
国際社会の急速な変化に適応するため、JICAではDXツールを複数導入。仮説検証を進めた結果、2つの課題が見えてきました。ひとつはツールの難しさ。Power PlatformやRPAは現場にはハードルが高く「特定のスキルを持つ人だけが作成できる」という状態に。敷居を下げるため、ノーコードツール「kintone」導入を検討されたのです。
もうひとつの課題が「考え方」でした。「ツール研修=操作技術を覚える」となり、業務を見直さずツールだけ入れる事例が増えたそう。「データサイエンスも同じです。いちばん大事なのは、統計スキルを使って何をやりたいか。正しい『目的』や『問い』を立て、業務の根本を見直せる。そういう人材育成につながる研修を探していました」と、本村様は語ってくださいました。
「決め手はエンさんのウェビナーです」と坂部様。「DX人材育成を検討する中でウェビナーを視聴し、終わった瞬間に隣に座っていた本村と『(探していたのは)これだね』と意気投合しました」と語ってくださいました。
ウェビナーではエンのkintone導入事例をベースに、「kintoneは手段であり、目的は業務改革である」「kintoneを教材(DX人材の知育玩具)と捉え、業務プロセスを見直す」「研修後が大事であり、ワークショップを通じた受講者支援が必要」という、DX人材育成のセオリーをご紹介しました。
本村様は当時をふり返り、「安心した」と語ってくださいました。「私たちの課題と一致しており、『業務の見直しが大事』という自分たちの仮説は間違っていないと、背中を押してもらった感覚でした」。支援内容のすり合わせを経て、2024年12月、kintone導入支援がスタートしました。
・[DXリスキリング]では、kintone基礎研修+実践ワークショップをご提供。
・対面研修は1日で、kintone+フォームブリッジ+kViewerのハンズオンです。
・研修後は「業務改善ワークショップ」を開催し、隔週で約3ヶ月フォローしました。
・受講者は15名。kintone上でトヨクモ製品を含めたヘルプデスクを実施しました。
今回のkintone導入支援の全体像
「kintoneで『できること』と『できないこと』、『できるけど、やるべきではないこと』を、1日で学べました」と本村様は語ってくださいました。
「研修カリキュラムが綿密に組まれ、料理教室のようでした。知りたいことを最短ルートで体験でき、効率的でしたね。その証拠に受講者が研修終了後も会場に残り、『これはkintoneにできそう』『ここはExcelのままが良い?』と議論していました。研修内で『どう業務を見直すか?』をくり返し伝えていただいた成果です」と、坂部様も語ってくださいました。
今回のkintone研修にはJICAの国内事業部や人事部、情報システム部など、合計15名が参加されました。現場業務の課題が大きく、「本気で解決したい」という部署に絞られたそうです。またオブザーバー として、CDO(最高デジタル責任者※当時) の戸島様にもご参加いただきました。研修ではアプリを合計75個、Webフォームを15個、簡易Webページを15個作成。「手を動かし続けたことで、理解が深まっていましたね」と本村様。
kintone導入の事務局となった坂部様(左)と本村様(右)も研修にご参加いただきました。
・kintone対面研修のタイムスケジュール
・研修受講者との交流スペース
・成果発表会のプレゼン内容(一部抜粋)
同機構では2024年12月から3ヶ月間、「DXリスキリング」のkintone導入支援を利用。2025年3月10日に、研修受講者による成果発表会が開催されました。
「まず、基礎研修+実践ワークショップという構成がよかったです」と本村様。「ワークショップでは受講者が自ら業務を分析しました。まず業務のあるべき姿を定め、次に解決すべき問題を言語化する。業務フローを可視化してから、kintoneアプリを設計する。ステップを踏むことで受講者の理解度が上がりました」。
坂部様は「発表会までやってよかった」と語ってくださいました。「当初は研修と伴走支援だけの予定でした。エンさんの提案で発表会が決まり、受講者の本気度が上がりました。締め切りが決まり、『お尻に火がついた』状態ですね。エンさんのヘルプデスクへの質問も増え、学習が加速しました」。
エンの導入支援を通じて、合計6件の改善プランが企画されました。代表して4組が成果発表会へ。最終的にkintoneを業務利用することになったのは1組で、残り3組は「Excelを見直すことにしました」「海外職員も使うため、Microsoft365のFormsを選定しました」といった結果になりました。
「これは狙い通りで、成功だと感じています」と坂部様は語ってくださいました。「もし発表者全員がkintoneに固執したり、kintoneに過度に依存する状態になっていたりしたら、この取り組みは失敗です。JICAにとって『kintone』は道具のひとつに過ぎない。育てたいのは、業務プロセスを見直し、適切な道具を選べる人材です。『検討した結果、kintone以外の選択肢を選びました』という発表は、私たちの目指す姿なのです」。
研修に参加した国内事業部では、kintone業務利用が本格化。人事部では「別な業務でkintoneを使ってみよう」という機運が高まっているそう。また、成果発表会はJICA全体に展開され、「私たちにもできそう」「kintoneをやってみたい」と次の世代の挑戦者が生まれているとのことでした。
「『自分たちで変えていける』という意識が現場に芽生えたことが収穫です」と、本村様は笑顔で語ってくださいました。
「これまで『システム開発は専門家に頼むもの』『業務改善は関心がある人がやるもの』という空気が、JICA内にありました。今回の研修やワークショップで、業務プロセス改革のステップを学べました。正しい段取りを知り、扱いやすい道具(kintone)があれば、現場職員が躍動する。この検証をできたことが、次の一歩につながっています」と本村様。
また坂部様は「改めてkintoneのUI/UXはわかりやすい」と語ってくださいました。「パソコンで図表を作る感覚です。kintone上でパーツを組み合わせればアプリができ、裏側で簡易データベースが生成される。真剣にデータベースを考えずに済む。現場の敷居をぐっと下げ、『取りあえずkintoneでプロトタイプを作ろう』という流れができました」とのこと。
今回はkintone研修の裏側で、情報システム部のみなさんがガバナンス検討を進めていました。「現場のみなさんがkintoneで何をやりたいのかを聞きながら、エンさんと定例会議を設定し、kintoneの利用ルールや取り扱いデータ、各種設定を整備しました。現場が安心してチャレンジする基盤も整いました」と、本村様はふり返ってくださいました。
「今後のテーマはやはり人材育成です」と坂部様。「国際社会の変化は加速し、JICAも変化が必要です。安定志向ではなく、現状を疑い、ビジネスプロセスを変革する人材を増やしたい。その足がかりが2024年度のkintone導入でした。失敗を恐れず、挑戦する人を増やすためにも、kintoneを含めた環境整備を進めたい」と今後の展望を語ってくださいました。
kintoneが人材育成の「スイッチ」になる。その可能性を実感したインタビューとなりました。
公開日:2025年10月1日